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僕は大いに勘違いをしていた。
誰が怪盗を義賊と決めた。
誰が怪盗を不殺と決めた。
もう少し気持ちを落ち着けていたら、もっと慎重にもなれたろう。不用意に近づこうなどと、思うこともしなかったはずだ。そして先入観や色眼鏡といったこ洒落た装飾品を取り払って、しなければならないことや、しちゃいけないことなんてのを、しっかりと考えられていたことだろう。
僕は馬鹿だ。
普通、悪いやつが姿を見られたら、見た人間がどうなるかくらい、予想がついたろうに。
「冥土で言っておけ、キール六世と話をしたとな」
怪盗は笑顔に似た無表情で、言った。
光は──僕の視界を満遍なく埋めた。
「あれ?」
──光は赤かった。
「よおよお調子くれちゃってんじゃねーの怪盗さんよお」
黒すら飲み込む赤。
烈火のごとき荒々しい赤。火焔のごとき怒濤の迫力をして、業火のごとき力強さを内包する。
仁王に立つ。
火花のように燃え盛る赤い髪。
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