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見知った後ろ姿が、迫った殺意を遮るように、僕との間にあった。全身に赤光を帯びたそいつは、放たれた光球を鷲掴みに、そのまま握り潰す。
言わずもがな。
こんな格好いい知り合いなど、僕は一人しか知らない。
「マルミラ……」
「おう我が盟友」
いつものように豪気に笑う。
そして肩を回す。いい肩慣らしにでもなったと、そういうことなのか。
「詰まんねえことに巻き込んじまったな。すまねえ。ちいっと待っててくれや、すぐ片あつけてくっからよ」
言うや否や。
「これは分が悪い、退散させてもらうとしよう」
苦笑がもれたかと思うと、影は闇に溶けた。
「させるかよ!」とマルミラの怒号、「追え!」とどこかへ命令する。
影が二つ、飛び上がるのが見えた。おそらくはラナ姉妹か。
「悪いな、アタシも追うわ」
挨拶もそこそこに、マルミラは足に力を込める。そして跳躍。
棚引く赤光の尾を一条残して、屋上はまた何事もなかったかのように、静寂に包まれた。
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