怪盗と僕

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 沢庵漬けをポリポリしながら、マルマラは感慨深げに言った。 「そんなに持ち上げるなよ、僕なんて大したことしてないだろ」  でも間違ってるよマルミラ。  僕は絶対に選ばれたりなんかしない。選ばれたりなんかするはずがないんだ。  だって僕はこんなにも僕のことで手一杯で、人のことに気を回している余裕なんて全然ない。他人の気持ちなんて知ったこっちゃなくて、ただ僕は言われるがままに魔女の手伝いをしただけで、誰かを救おうとなんて微塵も考えちゃいなかった。  だからマルミラ、君が救われたのは単純に君の力だ。君を取り巻く世界は、君が作り出したものでしかないんだよ。そこに僕が多分に関与してしまっていたかもしれないけれど、それは君が救われようと努力した結果で、うまく僕が嵌まってしまったというだけ。人が救われるのなんて、ほとんど自分のせいだ。
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