怪盗と僕

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「謙遜すんなって。謙遜すると品位が下がるぜ?」  下がるらしい。  まあなんにせよ、マルミラはどうにも僕を恩人に仕立て上げたいみたいだ。でも残念だったな、誇れる僕がねえんだよ。だからこれは謙遜じゃなくて訂正。 「さてと」  大きな欠伸をかまして、マルマラは立ち上がる。 「飯も食ったし、切りのいいところで私に聞きたいこと質問のコーナーといこうぜ」  僕の弁当をな。  再三に渡り人の弁当からオカズを頂戴していったことなんて、まるでなかったかのような清々しい表情で、マルマラは提案した。 「まあいいんだけどね、食欲もなかったし」  うん、マルマラの豪快さに張り合ってたら、それだけで日が暮れてしまう。本当ならマルマラの犯した窃盗罪やらなにやらで詰問してやりたいところだが、今回の目的はそこじゃない──家族の、親衛隊の安全こそ最優先のマルミラが、どうして怪盗を追っていたのかを聞かないといけない。この食事会の目的はそれに尽きる。
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