怪盗と僕

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 そういった、隊員の不始末への対応はおおよそ事後、しかも基本的にマルミラは隊員を小間使いにしたりしない。すなわち、事件が起きたあとに自分だけの力でもって状況を収束させるのが、いつものやり方なのである。  けれど、今回はマルミラだけでなく親衛隊員までもが動いている。それほど抜き差しならない状況にまで、追い込まれているのか。 「ま、それほど大変なことじゃねえよ」  表情はさして変わらず、いつものような腰が据わった口調で、マルミラは鷹揚と説明する。  フェンスの上部に腰を下ろし、外向きに座る。危なげではあるが心配はない。落ちてしまったところで、余裕で着地しそうだし。 「ただあのやろーが、ちいっとばかし私の隊を利用しやがってな」  利用。  かつて魔法の試し打ちをしたいがために、ひいては僕を襲う結果となってしまったそれと同じに。地位や情報目当ての、軽い気持ちからの入隊──あの怪盗とやらも目的達成のために、軽率にも入ってしまったのか。マルミラ親衛隊に。
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