怪盗と僕

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「で、どうするつもりなんだよ」  僕はフェンスに凭れる。  カシャンと、鉄が擦れる乾いた音がした。 「悪いことをやめさせる」  なんの疑いもなく、マルミラは言った。  相手の身の上とか、いきさつとか、原因や理由といった根幹にある諸事情を蔑ろに、ただ善悪を提示する。親の鑑だな。  いいものはいい、悪いものは悪い、硬直的な考え方かもしれないが、現行法がそうである以上、しきたりに則らなければならない。学校にいかなければ相応のレッテルが貼られるし、仕事をしていなければそれだけで人に見下される。  それが本当に良いか悪いかはさておいても、人を見極める判断基準はとても難しい。だから点数に位をつけ、勉強を推奨する。スポーツを推薦する。芸術を優遇する。才覚こそが高尚な人間の証左。人を推し量る分水嶺(ブンスイレイ)ってやつは、そこにしか存在しない。
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