怪盗と僕

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 マルミラは両手でフェンスを掴んで、身体を傾け身を乗り出す。 「あいつが何をして、どう持て囃されて、誉め称えられたり、崇拝されたりしてきたのかはしらねえがよ──それが悪である以上、私は放任する気はねえよ」  確固たる力強さを持って、何物にも挫かれない鋼の意気でもってして、マルミラは、仲間の、身内の非行を容認しない。  一途で頑固。  強さの現れでもあるが、それが僕には心配だ。 「マルミラ」  顔を見ずに、僕は投げ掛ける。  物音からして、マルミラも耳だけ傾けているようだ。 「お前のことだから、『私は別にどうなってもいい』とか『仲間さえ救われればそれでいい』とか、気持ちのいい自己犠牲で済まそうとするなよ。そういうのは、誰も嬉しくなんかねえんだぞ」  犯罪を犯し囚われた仲間を、切り捨て、他人に預けてまで自分が救われようなんて考えない。そいつを救うことが一番で、自分は二番。相手が犯罪者だろうが、自分が犯罪者になろうが関係ない。  そんなものは仲間を救わない理由にはならない。
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