怪盗と僕

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「で、その怪盗キール六世様はこの僕に何の用なんですか」  聞きたくはないが、聞かないわけにもいかないだろう。どうせならちゃちゃっと話を聞いて、ぱぱっと手早く事を済ませてほしい。  もし僕の処分が目的なら、さっさと片付けてくれよ。 「おや、おやおやおやあん? 俺にはタメ語で話しちゃくれねえのか。寂しいねえ。俺だってキール六世やってるってだけで、今はマルミラ・ジュークなんだぜ? もっとフランクにいこうぜ」  怪盗は言った。  フランクに、を表現しようとして両手を広げて無防備をアピールしようとする。が、いかんせん今はまずい。逆さの体勢で手を離したら当然起こるべきことは決まってる。  はためく布地。  プリーツスカートが、重力に負けてめくれ始める。  またさっきみたいに手で押さえるだろうと思ったが、それにしては反応が遅い──もしかしてこれは事故か。無意識的な動きから生じた事故。  いやまあ、事故ならしょうがないよね。  そして。  スカートがめくれ上がる。
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