怪盗と僕

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 温厚な僕だが、いくつか許せないものがある。その中のひとつとして最たるものを挙げるならば、それは。 「……スパッツ」  スカートの下には、スパッツが履かれていた。 「なんてな」  にくたらしい笑みを浮かべた顔がそこにあった。これもまたお得意の冗談だったらしい。 「僕の反応を楽しんでますね」 「楽しんでこその人生だろ?」  無駄にスケールを大きくして、怪盗は笑う。黒光りするスパッツを隠すこともなく、異様な体勢はそのまま。頭に血が上らないのだろうか。  にしても。  別にスパッツそのものは嫌いじゃない。だけど、それはスカートの下に履くものじゃないだろ。  それ単体なら、身体のラインが綺麗に浮かび、肉体を引き締める運動的な服として納得がいく。だが、スカートの下に履かれたそれはスパッツ本来の役割から大きく逸脱していて、身体のラインもくそもない。ただのアンダースコートに成り下がったスパッツに、僕は納得しない。  いや別に下着が見たかったわけじゃないけどさ。 「あれ? なんか怒ってる」 「いえ別に」  おっと顔に出てしまったか。  別にスパッツ談義に花を咲かせるつもりはない。この話はまた別の機会にとっておこう。
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