怪盗と僕

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 なんだ、ただの伝言か。  まあこんなやつわざわざ殺す必要もないって思われたのか、それとも、こんなやついつでも殺せると思ったのか。まあ、どっちだって大した違いではないけれど。 「伝えるのは別にいいですけど、いったい何で対決するんです?」  強い。  この怪盗は強い。  だがマルミラもまたその更に上をいく技能を持った、それこそ僕に仲介を頼まざるを得ないほどに、絶望的に尋常ならざる常識の右斜め上を行くファンキーでファンタスティックなストーキングをやってのけているようだ。  そんな相手と果たし合いって、何をどうするつもりなんだ? 「かくれんぼだ」  あれ、案外普通だ。  専売特許なのはわかるが、それってもう負けてるんじゃないのか。 「この街の誰かに俺は変装する。そいつを見破ったらお前らの勝ちだ」  街の誰か、ね。確かに数はあるが、そんなものマルミラには別段の障害にもなりは……。 「お前らの?」 「ヨーイチ・シガラキ」  フルネームで名を呼ぶ。  怪盗は叩きつける。 「挑戦するのは、お前にだぜ」
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