縄跳びと罠

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 地下での最後の詰め勝負の際、みんなには避難を指示した。チャンタクさんは気絶していたので、是非もなくラナ姉妹に運ばれ、気がついたときにはすべて事件は完了していた。  それがチャンタクさんには不服であったらしい。 「私だって一緒に戦いたかったんです」  少し、目が潤む。  やっと言えた、とチャンタクさんは。悔しかった方なのか、嬉しい方なのか。ただ彼女の、泣くまいと唇を噛み締める表情が、いやに鮮明に目に刺さった。  悪いことをしたとは思わない。  あれが正しい選択だったとも思わない。  けれど、自分以外の誰かを危険に晒してまで、勝ちたいとは思えなかった。僕が言えるのはそれだけ。  あれ?  つい最近、そいつはよくないという話をどこかで聞いたような。  偽マルミラとの。  怪盗キール六世との会話。  その会話の中で、僕はマルミラへ向けたつもりで注意したんじゃなかったか。  自分勝手はよくない。  みんなのことを考えろ。  うわ、ブーメランだ。  なんて間抜けなブーメラン。
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