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こんなことを言うと、なんてこいつは自分勝手なのだと思われること受け合いだが、僕が彼女たちの行動を嫌だと感じたのは、置いていかれたという仲間意識から来る疎外感ではない。
マルミラへの苛立ちや嫌悪は、そのやり方に対する感想であって、マルミラが僕を信頼してくれなかったことに文句を言いたかったのではない。むしろそんな理由すらは後付けだった。
なんてことはない。
僕はひとりになるのが怖かったのだ。
幼馴染みたる彼女。
安芸津憐。
自他ともに認める天才。
僕は彼女の影になることで、傲慢にも彼女の支えになれていたような気がしていた。彼女が果たして僕を必要としてくれていたかは定かではないが、むしろ周囲を飛び回る羽虫がごとくに厄介に感じていたかもしれないが、僕には彼女が必要だった。誰かを支える役割を得たことで、僕はしたっぱに徹することができた。
何もない状態は不安定で居づらい。だからきっと人は、肩書きや役職を大事にする。それは僕にも同じことで、天才たる彼女が行う天衣無縫の様々が完結した後に、あるいはすべてが破綻した後に、その事後処理をするのが僕にとっての日常で、役割だった。
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