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金魚のフンさながらに、腰巾着にも程があり、でもそれなりに充実した日々を、僕は小学校中学校と送っていた。
パシられたり、馬になったり、人体実験されかけたり、甲子園を目指すとか言われて1000本ノックに付き合わされたり、ねずみランドを一日で制覇するのは可能かどうか挑戦させられたり、本場のマグロを食いにヒッチハイクで青森まで行ったり、縁談を断るために偽装結婚式をあげたり、東京ドームの地下でなんかすごいやつらと戦う羽目になったり、なんかじっちゃんの名にかけたり真実が一つしかなかったりする人達と対決したり──挙げたら切りがないが、彼女のする行動の大部分が常軌を逸していて、僕はよくそれに連れ回された。
まあ僕がたまたま近場にいたというだけで、別にそれは僕でなくてもよかった。だから僕は彼女にとって何でもなかったのだと思う。
だから僕も、彼女がいなくなろうとしていたあの時、確かにいなくなってしまうのは寂しかったが、それも仕方のないことと割りきっていた。
でもきっと心のどこかで、拠り所を失うことに恐怖を感じたはずだ。だから僕は、こんなことになってしまった。彼女を追いかけるなんて惨めなことになってしまったのだ。それが本当に不本意だったのか、今となってはもうわからない。
だが、いなくなってみてよくわかった。
──僕は影になれるのなら、彼女でなくてもよかった。
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