縄跳びと罠

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 逃げることしかできない。  僕には誰も救えない。  誰かの手を借りたのは、放り投げたのだ。自分ではどうしようもないから。補助を乞うたのではなく、自分は動かず、寒々しく傍観していただけで──それのどこが仲間だ。  結局僕はひとりでいない為の、友達の、仲間の、役割を演じていただけだった。打算と計算が関係のすべてで、危うくなったら切り捨てる。徒党は組むが、肩は組まない。自分の人生を賭けてまで、他人の人生を気に掛けてまで、守る気になれない。  所詮そんな程度のもの。  薄情なのだ。  あらゆる感情が薄い。  人からの好意や害意に対して僕は反応できない。  興味がない。    それは下っ端根性にも通じるところがあるのだが、僕はきっと『どうでもいい』のだと思う。  目立つのなら目立ってもいいけれど、でも目立たないならそれでもまた別に構わない。助けられるかどうかは問題ではなく、助けられないかどうかも問題ではなく、助けたかったら助けないし助けたくなかったら助ける。付き従う相手を支持するが、傾倒はしない。だからといって他に誰か気になる人がいるというわけではなくて、いやきっと、僕は世界中の誰にだって傾倒していない。  そんなに真面目に生きちゃいない。
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