縄跳びと罠

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 俯(ウツム)く。  言い当てられたことで、どこかばつの悪さを感じたらしい。別にそれほど悪いことを考えていたわけでもないが、気がついたら僕は視線を下に逸らしてしまっていた。 「別に僕は負い目なんか……」 「感じてねえって?」  マルミラは竹刀を肩に構える。「ま、私にゃまったく心当たりがねえから、何のことかはさっぱりわからねえんだけどよ」と、威圧感たっぷりに。語気が強いのは常にだが、今日はまた一段と強い。苛立ちが露骨にも言葉の端々に滲み出ていた。  それにしても凛々しい。  武器を構えた姿がこれほど似合う女性というのも、そういるものではない。 「別に私はいいんだ、労るのも労られるのも慣れてるからよ。けどイムにはもっと優しくしてやれ」  いきなり変な提案をして、マルミラはチャンタクさんを見る。  少し離れたところで、チャンタクさんは雑多に用具がしまわれた棚を品定めしていた。なのでこちらの声は届いていないようだ。 「あれでもあいつ、いろいろ我慢してんだぜ?」  「やりたいことも、やってあげたいこともいろいろあるってのによ」。健気なやつだ、とマルミラは言って、しんみりとした口調になる。
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