縄跳びと罠

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「はあ……、そうやってお前はせせこましく生きてるから忘れちまうんだぜ? 人の顔とか覚えられないタイプだろ、お前は」 「いやあ、はは」  そうなんだけどさ。  改めて指摘されるとちょっと堪える。  でも何か忘れたりしたかな? 「地学の講義でイムと初対面みてえに話したらしいが、イムはお前のことよく知ってたみたいだぜ。何があったかまでは私も知らねえんだが」  あの時が初対面じゃないだって?  それよりも前にチャンタクさんに会ってたっていうのか。  あんな可愛らしい女の子と出会ったら、さすがの僕でも忘れないと思うんだけど。  どこか蔑むような目で、マルミラは僕を見る。だって覚えてないものはしょうがないじゃないか。 「話す機会がなかった、割り込もうにも飄々とかわされる。だってのによ、あいつはずっとそんなこと露とも気にしちゃいねえんだ。話せなかったことなんかどうでもいい、かわされたって大したことじゃない。それよりも何よりもあいつは──お前の心配ばっかりしてるんだぜ?」  なにやったらそこまで恩義を感じるものなんだかな。  マルミラは飽きれる。  それはチャンタクさんの直向きさにか、あるいはそれに気づかない僕にか。
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