縄跳びと罠

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 というか、お前がそれを言うのかよ。  マルミラは基本性能として親切を初期装備している。本人が気づいているかは定かではないが、親衛隊の面々(特にラナ姉妹)から警戒されるほどには、僕に取り分けて親切だ。  それはやはり件(クダン)のいざこざが関係していて、その時の心証が行動にも反映されてしまっているのだと思う。  マルミラは嘘や冗談を言えるタイプではない。本人が知らないと言っている以上、やはり本人はその事に感づいてはいないようである。  チャンタクさんの事であったり他人のあれこれには気が回るが、自分のことはそれほど気にならないらしい。医者の不養生、いやこの場合は紺屋の白袴のほうが雰囲気があるか、無垢で単純なマルミラの親切は、一応はありがたい。しかし一部の反感を買い、抹殺計画に転嫁されかねない危険を孕んでいることを鑑みれば、僕としては早急に認識してほしいのだが。  恩義。  マルミラからもそうだが、果たしてチャンタクさんとは何があったのか。覚えてないものは思い出せない。チャンタクさんから話してもらうか記憶を揺り起こすしかないのだが、おそらく後者は期待できないな。となると訊くしかないか。  それもなんだか恥ずかしい話だな、自分の厚意を改めて訊くなんて。どうせ一度きりの出会いだからと、『名乗るほどのものじゃない』とか『通りすがりの正義の味方だ』とか何とか格好をつけてしまっていないといいけれど。
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