縄跳びと罠

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 情けは人の為ならずとは言うけれど、見事なサイクルになってしまったものだ。  最初に報いたのは僕だ。  どんな思惑があったにせよ、こちらに来てすぐ、世界の仕組みに不案内だった僕に優しく手解きしてくれたのはマルミラで、それに僕は恩義を感じていた。だからマルミラを助けたいと思ったのだ。  だからマルミラの恩義も、チャンタクさんの恩義も、気持ちはよくわかる。今回の怪盗との対決だって、きっと本当にマルミラを助けられればと、少しは思っていた。どこかで帳消しになるようなものではないのかもしれないけれど、でもそれを返すことに、言葉じゃ伝わらないありがとうを乗せているのだ。だから返したい。  はあ、まったく、潔くすっぱり突っぱねてしまえばいいのにな。僕ってやつはほんとに、無碍にするのも億劫ってどういうことだよ。 「わかったよ」  チャンタクさんを除け者にはしない。でもやっぱり戦線に出すのは勧められない。だから裏方とか補佐役に回ってもらおう。それならチャンタクさんだって納得してくれるはずだ。
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