縄跳びと罠

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 あまり似合わない。いつもしないような、そう、言うならば優しい表情をしてみようと思ったけれど、でもそう言えば優しい表情というのがどういったものか、僕は寡聞にして知らなかった。本当はそんなもの無意識にできてしまうようなものなのかもしれないけれど、でも僕はきっと無意識でいたら、ただただ意識をどこかに置き忘れてしまった死人のように無表情になってしまう。表情筋は使わないと衰えていくらしい。一日一回何でもいいから笑顔になれることがあればいいというが、苦笑いは果たして笑顔にカウントされるのだろうか。  思って、不意に笑みが零れた。  それが苦笑いだったのか、それとも優しい表情だったのか、僕にはよくわからなかった。  さて、優しく云々の話もまた後日にしておくとして、今すべきは大きく二つだ。  怪盗とのこと、果し合いに際しての傾向と対策、そしてもうひとつは、置かれている僕への措置をどう緩和させるか、である。  果し合いのことはこの際だ、禍根を残さないように全部きっちりと話してやろう。  マルミラに隠し事は通じない。それどころか鬼ごっこもかくれんぼもマルミラという高性能哨戒機の前では見通しの良い平地と大差ない。まったくもって規格外の性能だなおい。ちなみに嘘が見破れるわけではないそうだが、それでも機微から違和感は感じ取れたりするとのことで、それはほとんど嘘を見破れるのと同じ意味な気もするけれど。
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