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退避を!
可及的速やかなる退避を!
もうすでにいくつもの用具がチャンタクさんの手元にあった。まだ何か物足りなげに品定めをするが、数にしてもう十近い品々がそこにあって、ほとんど準備は完了しているようなものだ。いつ実行に移されてもおかしくない。
見かねて、マルミラは「手伝うぜ」とチャンタクさんに歩み寄った。僕に言うべきことはもう言ったし、こちらでの任務はもう終了したということなのか。
くそっ。まずい。
このままでは僕が目覚めてしまう。
マルミラならまだしも、チャンタクさんにそんなことをされた日には、もう取り返しのつかない領域に足を踏み入れてしまうのは不可避である。それどころか僕だけでなくチャンタクさんもそちらの方面に目覚めてしまわないとも限らない。服装だけで人を判断するのはどうかとも思うが、実際昨日のチャンタクさんの服装はどこか扇情的で、すでに女王様の片鱗は垣間見せていた。きっとその資質があるのだ。
拳に力が入る。
ぎしりと、縄が軋む。
一刻も早い回避が望まれる。
方法はいくつかある。
まず案1だ。
何らかの魔法を駆使し、縄跳びを焼き切る、あるいは切断し拘束を解いて逃走を図る。
だがこれにはリスクが伴う。それしきのことはマルミラも予測しているだろうし、その対策をすでに講じている可能性がある。仮に逃走が成功したとして、その後ずっと逃げ切ることはまず不可能。おそらくすぐにでも再び拘束されるだろう。前者にせよ後者にせよ、そうなってしまえば、より悪辣さを増した刑罰が科されることは必至である。
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