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僕の独り言などなかったかのように、準備を淡々と進める二人。
おそらく事前の打ち合わせとして『僕の言動に反応しない』ことでも決められていたのだろう。
少しだけチャンタクさんがそわそわしているが、もしかしたら本当なのではないかという心理が働いているようだ。
僕としてはそこに漬け込みたかったのだが、しかし既にその手は封殺されている。
マルミラがチャンタクさんに耳打ちをし、それによってチャンタクさんが俄然やる気を出したのだ。
何を言ったのかは知れないが、間髪を入れずなされたマルミラの耳打ちからも、僕に余計なことをさせまいという明確な意思が覗き見える。
他に、案3……、だめだ、もう手がない。
あるにはある。
注意を逸らす一手、怯ませる一手、退却させる一手。
そのどれもが片方にしか効ききそうもなかったり、短時間しか作用しそうもなかったりで、一時しのぎの姑息な手段にしかならない。どれもこれも確実性が乏しい。
今のふたつの応対を見て確信できる。彼女たちはあらゆる状況を既にシミュレートしてきている。見くびるようで申し訳ないが、僕の言葉が嘘だと察知できたとして、マルミラならいざ知らずチャンタクさんにそれを即断できるような技術があるとは思えない。余程の打ち合わせがあったとみえる。
どうする。
これはもう逃げられないのか。
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