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慄然とする。
恐怖には違いないが、それは血の気が引くような。動悸の昂りや感覚の鋭敏化とは別種の、瞬間的に身動ぎひとつできないまでに身体が硬直し、次いで微かな震えがやってくる。恐怖と言うよりは、怖じ気づいている、と言った方が的確かもしれない。
「そんな……」
「気付いたようだな」
これから起こる未来が待ち遠しいとでも言わんばかりに、マルミラはほくそ笑む。
机の上。
細い棒の次。
それは洗面器にたっぷりと。
一応の配慮あってのことか、本来的なもの用意できなかったようだが、それはシャンプーやリンスで代用したのだろうぬるぬるしそうな液体が見えた。
それはまあありがたいというか助かる話だが、注視すべきはそこではない。
その次には、最初のものよりも少しだけ太めの棒があり、その次はもう少し、さらにもう少し、と段々それらの棒は太さを増していく。ちなみにチャンタクさんが先程いじっていたボーリングのピンは、中程にあった。これがどういう意味か。すなわち──あのボーリングのピンでさえまだまだ序の口であると。
いよいよ終盤、振動を与える器具やら、クスコやら、なにやら本気めの開発めいたものが用意されていたりして(何故体育用具室にあるのかは追及しないでおこう)、そして最終目標なのか、一番の目玉が左端に鎮座していた。
球体。
ボール。
バスケットボール大の、何の変哲もないただのボールが、当たり前のように置かれていた。
「入ってたまるか!」
僕の括約筋を信頼しすぎだろ!
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