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よし。
これで一人撃退することに成功した。
しばらくはもう帰っては来れないだろう。
好転したと断ずるにはまだ早い。
まだ拘束は健在。
道具の準備も万端。
一人残されたチャンタクさん。
少しだけマルミラを追ってみたようだったが、もうかなり遠くまで行ってしまっていたようで、すぐに帰ってきた。フルーレの先っちょを弾いては、なにやら悩み顔。面子が足りなくなったとはいえ、状況に大した変化はないのだ。全権はいまチャンタクさんに一任されている。
状況は継続して逼迫している。
一か八か縄を切ってもいいのだが、この縄に何らかの細工が施されていたとして、もし切断が不可能であったなら、僕の行為は火に油、チャンタクさんの加虐心を煽る結果につながりかねない。
どうする。
この空気を維持して場を白けさせるべきか。
同様にチャンタクさんが逃走しそうな文句を考えるか。
暴れてみるか。
悲しんでみるか。
いっそのこと受け入れる体制をとって、そのあまりの醜さにやる気を減退させるという手法をとってもいい。
手段はいくつかある。
最善手はどれだ。
パシャリ。
それは紛れもなくシャッター音で、シャッター音以外の何物でもなく、聞き間違いではないかと顔を上げると、やはりそれは機械を稼働させたことによって音が生じたのに間違いなかった。
「いまの表情は中々のシリアス顔でしたね」
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