縄跳びと罠

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 そして。  満足げに鼻歌など歌いながら、チャンタクさんは出した品々を片付けていた。  遊びに遊んでこのまま出しっぱなしでははた迷惑でしかないからね。マルミラとは大違いだな。まったくなんてやつだ。  心の中で僕がチャンタクさんを賛美していると、 「そういえば」  とチャンタクさんが言った。  いや賛美していたのは決して恐れを隠すためではないですよ。  ええもちろんですとも。  チャンタクさんは、ボールを持っていた。  さっきの騒動で議題にあがったボールを。  え?  ナニヲスルツモリデショウカ? 「このボールって、昨日外に転がってきたやつと同じボールですよね」  ふう。  なんだ、そういうことか。  ボールにもうトラウマめいたものを感じていたので、あまり見たくない気持ちが働いて目を逸らしていたが、よく見てみたら確かにそうだった。  昨日の夜。  深夜の学校探検。  学園八不思議にまつわる怪人の噂の真偽のほどを、少しばかり解明してやろうとして、僕とチャンタクさんが学校に忍び込んでいた時のこと。  学園八不思議がひとつ『なくならないボール』。  体育館やグラウンドにずっとボールなどの道具が何故か残っているという話だったのだが、実際に僕たちはボールが外に転がったところを見た。街灯に照らされはっきりと。だからこのボールがその時のものと同じ形状だということは、疑いようのない真実だ。まあ同じ種類というだけであって、同じボールではないかもしれないが。 「あれ、でもこんなボール、授業でも使ってないよな」  思い返せばこの形状のボールを使って誰かが遊んでいる姿を見たことがない。  どうしてだろう。
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