縄跳びと罠

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 今まで気が付かなかったが、僕はこんなボールを一度も見たことがない。  体育の授業で使わないボールであったとしても、何らかの部活動や、休憩時間の遊びなどで、使われているところを目撃していてもおかしくない。だというのに、一度も見たことがないというのはどういうことなのだ。  体育用具室を見回してみると、部屋の奥の隅にあるボールケースに、同じ種類のボールが山に積まれている。やはり偶然にこれがこのボールにあったのではなく、何らかの競技で使用されているものだということはわかる。だが同時に、奥の隅に追いやられている時点で、頻繁に用具室内を出入りするのではないこともわかる。 「これは古種競技用のボールですね」  僕が疑問に思っていたのを感じて、チャンタクさんが説明してくれた。 「いまはもう流行っていないので取り入れるのをやめてしまった学校も多いそうですが、少し前まではうちでも部活動がありまして。でももうその部も人数が集められず廃部。こうしてボールだけが残ってしまったというわけです」  古種競技。  つまり昔の競技ってことか。  ふうん。 「テテさんもそれなりに古い方ですからね、昔の道具が懐かしいのかもしれませんね」  そうなのである。  あの怪人伝説とされていた学園八不思議は、実は図書館に住む幽霊、もとい精霊であるテテさんが、夜な夜な学園に来て遊んでいただけという壮大なオチがあった。まあ怪人はまた別にいたわけだが。でも他の不思議はほとんどがテテさんによるものであって、これもまたしかりだった。 「遊んで片付けないとか、なんか周囲のダメ人間どもに完全に影響されているよな」  チャンタクさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものだ。
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