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いや、むしろ逆か。
存在してる期間で言えばあいつが周囲に影響を与える側なんだよな。
でもあいつは日がな引きこもってるわけだし、誰からも影響なんて受けない。
「ということは、つまりだ」
拡散したのでなく集約。
僕の周りに、集約されたということ。
ダメ人間が僕を取り巻いている。
「僕の人生って……」
類は友を呼ぶと言うけれど、集まりすぎだろ。
きっとあれだ。
使い勝手がいいのかもしれないな。僕みたいな感じの下っ端が、具合として丁度いい。適度に屈服させやすくて、適度に騙しやすい。弄ぶのにこれほど愉快な玩具はない。
まったく、難儀な人生してるな僕も。
それにしても。
どうして怪盗キール六世は僕なんかに挑戦状を叩き付けたのだろう。
マルミラは強い。
僕なんかが比較対象になることすらが申し訳ないくらいに強い。
そんなマルミラとあの怪盗が追いかけっこをするとしたら、果てのないいたちごっこになってしまうのは目に見えている。
当人は逃げ切れる自信はあるようだし、マルミラだって上手いことすれば捕まえられるはずだ。だから正面切って戦うとすれば、きっとマルミラに分があるとは思う。でも詐称と偽称の達人であるところの怪盗が、完全に逃げに徹している今時分では、おそらく決着にはかなり時間のかかる作業になるはずで、だからこそ第三者や別の競技を用いることが提案された。
終わらない今の戦いを止めてしまって別の何かに委ねてしまう。そして勝敗をすっきりはっきりとさせれば、もういたちごっこはしなくてもいいし、早期に決着がつく。
それはわかる。
それはわかるんだよ。
でも色々とおかしい。
というか、そう少しばかり急ぎ足が過ぎるのだ。
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