縄跳びと罠

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 まず種目が相手に有利なのが、どう考えてもおかしい。  試合内容は『かくれんぼ』。  怪盗がこの町のどこかに、誰かとして変装して隠れる。  それを僕が見つけられれば勝ちというものだ。  刻限についてはまだ聞かされていないが、それにしたって最大でも一日くらいがいいところだろう。もっと早く決着をつけたいなら半日、いや三時間も与えてはくれないかもしれない。  なんにしても、はなから僕には無理な戦いだ。  奴が僕を高く評価しているのか、それとも適当に見繕ったのか、どちらにせよ人選を誤ったとしか言いようのない選択で、これじゃあ試合をする前から勝負が決しているようなものだ。自慢じゃないが、仮にハンデやアドバンテージを貰ったとしても、僕には勝てる自信など微塵もない。  ……ほんと、ちゃんと断ることを覚えないとそのうち痛い目を見るな。  まあさっきもう少しで見るところだったけどね。  頑張れ、ノーと言える僕。  いや僕の地力云々はこの際どうでもいい。  やっぱり問題なのは、そのハンデやアドバンテージがまったく明示されていないところだ。  僕は選ばれた。マルミラ側として、マルミラ本人に代わって、不本意ながらも戦うべく選ばれてしまったのである。  ならば、相手だって同じように代役を立てなければいけないのではないか。  そうなのだ。  相手が怪盗のままというのがおかしい。  さすがに僕のレベルにまで引き下げろとは言わない。でも彼らの戦いの規模を縮小させて、それを別の形で決しようというのなら、せめて双方から代わりとなる人物を選りすぐるべきであって、僕一人だけが選ばれているというのは納得がいく話ではない。
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