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妥協がない。
僕らへの譲歩がまったくない。
これまでのように逃げ回ることはないのかもしれないが、それはマルミラの埒外で規格外な才覚の成せる技であって、逃げ回りが変装のみに限定されようが、仮にその場から一歩も動かない制約が成されようが、まず完全なる変装が実行される時点で、どうあれ僕にとっては同じことだ。
それまでもを考慮して、もっとこちら側に歩み寄った提案をしてくれてもよかったのではないのか。
だいたいあの様子じゃマルミラだって知らなかったみたいだし、これでは代案を用意したって反故にされる。ただの独断に、賛同するとは思えない。
まあそれを見越して、もし負けてもマルミラが同意せず何もなかったことにすればいい、なんてことを浅はかなりにも考えてみたけれど、そこまでしておいて後からなかったことにしてくれというのは、少々虫が良すぎる話だよな。
ここはやはり、何らかの場を設けて当人同士で話し合って、改めて解決策をひねり出してもらうのが得策だとでも提案したほうがいいのかな。だけど当人同士で話し合えないから僕を介したと考えれば、それはどうにも無体な提案か。
うーん。
チャンタクさんには悪いけれど、もしかするとこの話はまるっきりなかったことになってしまうかもしれないな。
「…………この校舎も古いですし、仕方のないことですけどね」
と締めくくったセリフを聞いたところで、僕はチャンタクさんの話の途中で上の空になっていたことに気が付いた。
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