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一度言ってしまった手前、男としては二言はないと言いたい。
でものっぴきならない事情がある場合に限り、二言を許してはくれないだろうか。
「あのその話は」
「もう一回はわがまましてもいいんですよね?」
そうだった。
それは約束してしまったことだ。
先の一件で消化したように思えていたけれど、実際それは行われなかったのだし、まだその効力は失効していない。
そう言えば、なんて思い出したような言葉を告げて、チャンタクさんはダメですかと潤んだ瞳で肩をすぼめる。
すごいなあ。
ただ素直に感心だよ。
ここまでが目的だったのかな。
それともただ上手いこと重なってしまったのか。
なんにせよ、僕は断れない。退路がない。まるでここまで最初から思い描かれていたかのように綺麗な論法で、僕の逃げ道は完全になくなってしまっていた。
僕は「男に二言はないさ」と強がってみたりした。
いやこの場合は負け惜しみかもな。
「えへ、えへへ」
結局元の状態に戻ったチャンタクさん。
少し赤らんだ顔を手で隠し、その隙間から緩んだ口元が覗いている。
不気味と言ったら失礼だけれど、少しばかり変な感じになってます。
「あの……、好きな食べ物はなんですか」
「え、もやし、かな」
突然なんだろう。
好きな食べ物なんて。
「わかりました! 明日は私、腕によりをかけますから!」
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