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この体育館は劣化が激しいとかで、一部立ち入りが禁じられている。
床が抜けていたり鉄骨がひび割れていたりするのだそうだ。
だから授業や部活動ができるスペースも限られていて、あまり利用が積極的ではない。そりゃ危ないしね。
僕がここへ逃げ込んだのも、その見つかりにくさからだった。
まあそれが逆に作用してこんな悲しいことになってしまったりもしたけれど、でもそれすらも見られる可能性が少ないならば、これは功を奏したと言っていい。見つかることはまずないと思っていい。
だがしかし、しかしである。特定の部活動はこの体育館でなければできないような、道具やら条件やら、グラウンドや広い場所、他校の体育館などでは代替できない色々があるそうで、まったく使われていないわけではない。
すなわち、急ぐに越したことはない。
ガラリ。
戸が左右に開く音がした。
地面に這いつくばり、はあはあと息を荒げながら一生懸命に腰を前後に振る、全身を縄で縛られた男が、目の前にいる。
一瞬にして僕は絶望した。
「人間のクズねポムン」
「いいえ人間にカテゴリするのも恥ずかしいわパムス」
見上げるとそこに見知った双子がいた。
その顔は汚物を、バドを見る目と同じだった。
「あの……、一応釈明」
バタン。
戸が左右から閉じられた。
僕は人知れず泣いた。
その時僕はまだ知らなかった。
ラナ姉妹が部活動でここを訪れ、彼女たちが用具を持って帰らなかったという事実を。おそらく彼女たちは全力で拒否をしたことだろう。そして別の誰かが取りに来ることだろう。すぐに頭を働かせていれば、別の結末もあったかもしれない。
その後、学園八不思議が学園九不思議になったとかならないとか。
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