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いつもの朝、いつもの満員電車。
こんな時いつも、もう少し身長があったらと思ってしまう。
160に少し満たない自分では、すぐそこの吊革さえ掴めないし、掴めば目の前の中年からの視線が痛い。だが、こんなに窮屈でも乗らなきゃ会社には間に合わない。
窓の風景を横目にウォークマンで気を紛らしていると、不意に肩を軽く叩かれた。
突然肩に掛かった重みに驚きと怒りを持って振り返ると高校時代の懐かしい顔があった。
「久しぶり」
「ビックリしたぁ…久しぶり、元気?」
「おう、…お前太った?」
「ッ…失礼ね!!」
活きた会話をしたのはいつぶりだろうか。
最近は残業が続き、誰とも連絡を取っていなかった反動か、満員電車に乗っていることも忘れて話し込んでしまった。
気づけばもうすぐ最寄りの駅だった。
「…あ、次で降りなきゃ」
「そっか」
「ね、今度みんな集めて飲みに行こうよ!」
「そりゃいいな」
「早ければ今晩にでもメールする」
「…はいはい」
「じゃ、またね」
電車のドアが開き、ホームに降り立つと頭に暖かいものが乗った。
「太ったなんて嘘、むしろもっとしっかり食って寝ろ……じゃ、またな」
彼はどこか満足げに笑うと私の頭から手を離した。
すぐにドアが閉まり、過ぎる電車を見送った。
駅の階段を降りてると、携帯が震えた。
「もしもし…」
相手は高校時代の仲の良かった友達。電話の向こうから重々しい空気が流れ、暗い声が響いた。
たった今、彼が病院で息を引き取ったと
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