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――そこは、とある研究所。白衣を身にまとった大人たちが、それぞれ自分の持ち場にある液晶画面を見つめている。
あるのは電子パネルを叩く規則的な機械音と、時折聞こえる溜息のような息遣いだけ。
何かの調査中のようだが、随分前から行き詰まっているようだ。
進展の得られない毎日は、彼らにとって拷問だった。
が。
「……? 反応、発見しました! 青反応、間違いありません!」
若い研究員の興奮に上ずった声が上がると、その部屋にいた全ての人間が、一瞬の間を置いて、言葉の意味を理解してから、水を得た魚のように動き始めた。
一つの画面に群がり、皆一様に笑顔を浮かべる。
「すぐに……すぐに上に知らせろ! ……よくやったぞ、今日はおごりだ!」
幹部と思しき老人が、身なりに似合わない威勢のいい声を上げて、研究員たちに指示を施した。
それぞれが持ち場に戻り、忙しなく動き始めた時、大画面を眺めていた老人が、独り言を漏らした。
「随分時間がかかってしまったものだ。こんなにも遠いところに……。一体どのような日々を過ごされていたのか、嘆かわしいことだ――」
――遠く遠く離れた場所で、物語が幕を開けた。
彼らの喜びの先にあるのが自分などとは、まだこの瞬間、到底、千歳には考えられなかったことだろう。
なぜならそこは――――
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