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ですが、宇宙はとても広いのです。
少年の声が別の星の誰かに届くまで、どれだけかかることでしょう。
そして私達の地球はあまりにも小さいのです。
遠い他の星の誰かが、泣きながら星空を見上げていても、そこから地球は見えていないでしょう。
ましてや、豆粒より小さい少年の姿などなおさらでしょう。
それでも少年は、星空の、なんにもない暗いところを見て思うのです。
「もし、僕の声が届いたなら、どうか返事をして。
何万年かかったって構わないよ。
君の声が聞こえたら、僕も返事をするから。
僕はここにいるよ、君はひとりじゃないよ。だから、泣かなくていいんだよ」
いつしか少年は、大人になりました。
そして無人探査機を打ち上げる計画に携わることになりました。
その探査機には黄金のレコードが取り付けられました。
いつかどこかの誰かが拾ってくれたときに「地球」という星のことを知ってもらうために。
拾われる可能性のないそのレコードのことを、「意味がない」と笑う者もいました。
確かに、実用性がない試みだったでしょう。それでも人々は、そのレコードを遠い宇宙に向けて放ちたいと思ったのです。
無人探査機は、『海を行く者』と名づけられました。
『海を行く者』は4つの惑星が1列に並んだ、170数年に1度の年に打ち上げられました。
遠く遠く、どこまでも遠く、太陽系すらも突き抜けて進むことの出来るように。
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