ボイジャー

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何万年たったころでしょうか。 宇宙の波打ち際で、全機能が停止した『海を行く者』は拾い上げられました。 太陽系を遠く離れたその星からは、地球はもちろん、太陽の光すらも見えません。 地球人でないその生き物は、『海を行く者』のレコードを解読しました。 そして、 「わたしたちはここにいますよ。あなたがたはひとりではありません」 というメッセージと、その星の特徴などを付け加えて、『海を行く者』を修理し、地球に向けて放ちました。 『海を行く者』は、それから何万年か何億年か後に地球に帰ってきました。 ですが、迎えてくれる者は誰もいませんでした。 人類はもう絶滅してしまっていたからです。 落下した『海を行く者』に、土や砂がおおいかぶさり、地中に埋もれ、やがて第二の人類が掘り起こしました。 そのレコードを解読した彼らの驚きといったら。 自分達よりも前に存在した人類と、遠い星からのメッセージ。大きな発見です。 第二の人類は、宇宙を航海して戻ってきた『海を行く者』に敬意を示し、修理し、そして再び宇宙に送り出したのです。 もちろん、自分達のことに関する記録とメッセージを付け加えて。 「あなたがたの言葉を受け取った。彼らはもういないが、我らの中に存在する」 でも、そのメッセージは、遠い生命体に伝わることはありませんでした。 彼らもまた、絶滅してしまっていたからです。 ですが、また別の時代のその星の生物が『海を行く者』を拾い、修理をし、メッセージを付け加え、再び地球に向けて打ち上げました。
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