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そして、あの少年が大人になったときから、何十億年たったころでしょう。
航海を終えた『海を行く者』が地球に帰ってきたとき、もう故郷はありませんでした。
大きく膨れ上がった太陽は、水星も金星も、地球も飲み込んで、静かに消えてしまっていたのでした。
長い間、太陽も地球もない、暗いガス空間の中を漂っていた『海を行く者』は、やがて、何かに導かれるように、大きく旋回し始めました。
もし、そこが大気溢れる地上だったなら、『星を行く者』から流れる音楽を聞くことができたでしょう。
二つの惑星の、様々な国の音楽と、様々な言葉。
音のない宇宙に響き渡る、無音のメロディー。
そして、新しく付け加えられたメッセージが、光もないのに煌めいていました。
誰にも読まれることのないメッセージにはこう書かれていました。
「私達はここにいる。会うことはないだろう。
だけど私達は忘れない。
たとえ宇宙が忘れ去ろうとも、私達はあなた方を忘れない。」
まるで天地を創造するかのようにゆっくりと、それでも『海を行く者』は旋回を止めませんでした。
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