クーデレ少女がやってきた

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 幸い、胸の内でもがいている岸野雫には今の話は聞こえなかったみたいだが、一緒に暮らすというのだからそういうデリケートな話には注意してほしい。  日和さんは雫を胸から離してやるとクスッと笑うと、改めて俺と岸野雫の顔を交互に見渡す。 「うぅ、苦しかった」  岸野雫は目をゴシゴシとこすりながら、忘れていた分の呼吸を取り戻している。  その姿はなんともかわいらしかった。 「さて、ふたりとも、自己紹介は済んだかな? 今日から私たちは一緒に暮らすことになるんだけど、なにか訊きたいこととかはない?」 「はい、日和さん」 「あの、日和さん」  日和さんが言い終えると同時に、息子娘は同時に手を挙げた。  俺なんてつい一時間前まで彼女と暮らすことを知らなかったのだから当然である。 「おお、初日から息をあわせて手を挙げるね? とりあえず雫から聞こうか?」 「あの、お父さんとお母さんから、親戚の日和さんのところでご迷惑になることは聞いていたのですが」  話の途中、チラッと俺のことを見やる。 「日和さんに息子さんがいたなんて話、聞いてなかったです」 「うん。だって私があの人等に口止めしてたし」 「えっ?」 「ある日親戚の家に来たら、同い年の男の子と一緒に住むことに!? なんて展開、少し面白くない?」  ニィっと20代前半にしか見えない笑みを浮かべる。  そんな日和さんの言葉に岸野雫は口をあわあわと開くばかりであった。  そうだよなぁ、俺なんか日和さんとの付き合いは生まれてからずっと一緒で彼女のこと性格にはなれているけれども、岸野雫は日和さんのことよく知らないもんな。  高原日和は冗談のようでとんでもないことを平然とやってのける、歩く災害のような人だ。  慣れていなければ、今の岸野雫のように口を開けてポカーンとするしかできないだろう。  むしろ忘れていたが、岸野雫のこの反応が、本来正しい反応なんだよなぁ。
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