クーデレ少女がやってきた

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 それにしても岸野も俺と同じ学園だったとはな。1年生のときは、こんなかわいい子にも関わらず気づかなかったとは。  日和さんは俺の顔から離れると、改めて俺と岸野の顔を見る。 「さて、ふたりからの質問は以上でいいかな? 言っても、一緒に暮らしていれば知らずとお互いのことはわかってくると思うけどね」  俺はもう一度、岸野の顔を見る。  岸野は今何を考えているのだろう、気になったからだ。  知らない家庭環境、今まで一緒に仲良く暮らしていたという家族とは離れ離れとなって、ひとり町に残った彼女。  どうして彼女は、この町に残ったのだろう?  両親と離れてまでこの町に残った理由は一体なんなのだろう?  岸野は未だに笑わない。  この先の生活への不安を体現しているかのごとく、ただ無口無表情に、日和さんの言葉に耳を傾けるばかりだった。 (早く岸野と打ち解けたいな)  彼女はきっと不安だろう。だから、新しい家族になる俺が少しでも拠り所になれればな。そう思った。 「それじゃ、これにて新しい家族を交えた第1回家族談義を終わります。それじゃあ雫、これからは家族の一員として遠慮なくね? よろしく~」 「よろしくお願いします」  少女は子猫のような丸い瞳を俺と日和さんに向けて、無感情な声色で最後にそう言い、頭を傾けるのだった。
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