空回りする夜

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 先ほどのアホ解説の通り、岸野の部屋は元々の白の壁に水色を基調としたものを取り扱っている。  そこに、緑色のカラーボックスやベッドシーツを使うことで自然を表現しているのだ。 「お、カラーボックスの中はぬいぐるみ、と。やっぱり岸野は女の子なんだなー」  ぬいぐるみはカメだったり、イヌだったりと種類は豊富だ。  ベッドの上に大きなイヌのぬいぐるみがあることを考えると、彼女はイヌ好きなのかもしれない。  これはなにかプレゼントする場面があったとき、参考になるな。 「おっと、あんまり女の子の部屋をじろじろ見てると紳士が泣くぜ」   本来の目的を忘れていた。 「そういや岸野は不在ですかい」  今更だが、この部屋の新しい主は不在のご様子である。  こうなれば出直すとするか。  そう思いたったところで、岸野の勉強机の上に写真立てが置いてあることに気がつく。  手にとってみると、それは岸野の家族の写真であることがわかった。  母と父、ふたりに挟まれて微笑む岸野。  そこから、岸野と両親は本当に仲が良かったのだなとわかる。  それと…… 「岸野、こんな顔して笑うんだな」  まだこちらに来て一度も見せていない彼女の笑顔。  その笑顔は純粋そのもので、素直にかわいらしかった。
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