ひまわりの少女

5/46

910人が本棚に入れています
本棚に追加
/634ページ
 俺と岸野が通う野々代学園の制服を着こんで、右隣に一緒に 立つと笑顔でこちらの顔を見上げていた。  対する俺は…… 「まさか朝からみつな先輩に会えるだなんて、光栄ですね」 「と、言いながら笑顔ひきつってますね? 踏んでもいいかしら?」  妙な汗を背中に感じながら、作り笑顔を浮かべるのに精一杯であった。  俺はこの人には逆らえない理由がある。  それを知っていてなお、この人は俺の秘密を盾にこうして話してくるのだ。 「はは、まさかっ。恐れ多くもみつな先輩に会えたことが嬉しすぎて、思わず頬が緊張し──ってアウチッ!?」  その小さなかかとで、俺は足を踏まれる。  反応を見て、みつな先輩は「ふふっ」と軽快に笑った。 「ダメでしょ、由紀? 小さな女の子に踏まれたときは、“ありがとうございます!”って喜ばないと。ねー? というわけで、もう一回♪」 「あ、ありがとうございます!」ありがとうございます!  さっきよりも強く、俺は足を強く踏まれる。  みつな先輩は俺が痛みをこらえている姿を、いとも楽しそうに眺めている。 (というより、うっとりとしてる!?)  グリグリと踏みにじりながら、みつな先輩は俺の頭に手を伸ばすと、優しく撫でてくる。  下は痛く、上は……残念なことに気持ちいい。  みつな先輩は学園の中でもアイドル的なかわいさを持っている。  そんな女性に頭を撫でられたら、嬉しくないはずはなかった。
/634ページ

最初のコメントを投稿しよう!

910人が本棚に入れています
本棚に追加