ひまわりの少女

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 窓際の席っていうのは、外の景色が見れて授業の暇つぶしになるというメリットこそはあれど、片方の 隣の席が窓で埋まってしまうデメリットがある。  つまり、フラグが減るのだよ。 「俺らの周囲にはどんな女の子がいるんだい? ここ、重要だよね」 「なんでおまえは女の子が隣前提なんだよ。気持ちはわからんでもないけどな」 「早くっ、早くっ」 「ガキかっ。えっと、俺の隣が冬月っていう女子だ。確か、結構美人だったかな」 「おおー」  俺の隣ではないことは残念だけども、近くに勝平公認の美少女がいるとなると、心に波風がたたずにはいられない。 「おまえの席の隣も、美人、いや、かわいい女の子とでも言おうかな。そんな子があたってるぞ」 「本当か!?」  これは早速お近づきになってフラグを立ちあげて、仲を深めていかなくては! 「名前は!? 名前は!?」 「ああ、確かな」  一拍置いて、勝平はその席の方へ顔を向ける。  すでに席には今から語られようとする名前の少女が座っていた。 (そんな、嘘だろ!?)  少女のことを俺はよく知っていた。  サイドテールを下に傾け、本を読んでひとり誰とも接触を取ろうとしない姿勢。  “一”の字に口を形作りながら、無表情に彼女は佇んでいた。 「──岸野雫というそうだよ。おまえの隣は」  その席にいる小さな少女を指差して、勝平はそう言った。
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