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少なくとも、俺はそんな話聞いていないし、そもそも勝平なら岸野よりも先に俺に話すはず。
もしかして、嘘?
勝平の話を黙って聞く岸野。
少し目を背けて悩む素振りを見せるが、考えた結果首を横に振った。
「ごめんなさい。今日、私用事があるから」
「ん、そっか。残念だな。せっかく美少女を誘えると思ったんだけど」
口達者に、なんの臆した様子もなく勝平はそう言った。
勝平は別にナンパすることが得意というわけではないのだが、女性を褒める、気を良くさせることが上手い。
なんでも、勝平には上にふたりのお姉さんがいて、その顔色を窺うために身につけたんだそうな。
(まあ、勝平のことはいいとして)
「それじゃ、わざわざ時間を取らせてこめんな。気をつけて帰れよ~?」
勝平はそう言って自分の席に戻っていく。
岸野も帰り支度は整えたみたいで、勝平が戻るのと同時に立ち上がる。
ふと、彼女の目とこちらの目が重なった。
なにを考えているか読めない無表情。
すぐにサッと目は流れていって、カバンを持つなりそそくさと岸野は教室を出て行った。
「振られちゃったな」
「あのなぁ」
まさかこのタイミングで岸野に話しかけるとは思わなかったぞ。
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