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──俺が働くバイト先は、学校から離れた先にある『ソレイユ』という小さなレストランである。
学校が終わってすぐに俺はソレイユに向かった。
チリンチリンと小さなベルを鳴らして、俺はレストランの中に入る。
するとすぐにホールの女の子が迎えにやってきた。
「いらっしゃいませ、由紀くん? 少し遅かったんじゃないかしら?」
……ホールの女の子、といってもみつな先輩なんだけどね。
素敵な笑顔を浮かべながら制ソレイユの服に身を包んだみつな先輩は、その幼すぎる容姿からどう見ても労働基準法を違反してそうに見えるが、このソレイユでは一番の先輩である。
なにを隠そうこの店は、みつな先輩の両親が経営しているレストランなのだ。
先輩も家を支えるために、こうしてホールとしてポジションに立っている。
どうして俺が俺を尻に敷きたがるみつな先輩のところで働いているのか、それには事情がある。
決して俺がドMで、みつな先輩にいじられにやってきているわけではない。
「おはようございます、みつな先輩。すみません、勝平のやつが“一緒のクラスになれたんだ。これもなにかの運命”って離さないものでしたので」
「あら、また勝平くんと一緒のクラスなんですかぁ? へー、私の所有物に手を出すなんて、一度躾が必要かしら?」
小学生にも見えるみつな先輩の顔つきが、口調とは裏腹に、どす黒いオーラをまとった笑みへと変化する。
これでイケメンを爆発させる手筈ができたな。ざまあみやがれ。
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