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──バイトが終わると、俺はソレイユの裏口に出て、溜め息をひとつこぼした。
みつな先輩が着替え終わったら裏口で待ってろというので、その場で待機している。
しかし、同時にバイトあがったはずのみつな先輩が30分待っても来ないというのはどういうことなのでしょうかね。
女の子の支度は長いというが、果たしてそれなのであろうか?
「はぁ」
でも気持ちを整える時間が欲しかったから、丁度よかったかもな。
「まさか、岸野が同じバイト先に来るとはな」
俺は既に真っ暗となった夜の空を仰ぎ見ながら、今日のバイトを振り返る。
ソレイユの制服であるエプロンドレスに身を包んだ岸野の姿は、誰が見ても賞賛するほどに似合っていた。
バイト1日目ということで、お冷やをつぎに行ったり、後片づけをすることがほとんどの業務であったが、動きに無駄はなかったし、初日にして良い動きだったと思う。
今日1日付きっきりで監督していたみつな先輩も絶賛であった。
どこぞの高原由紀という俺なんかは、初日からグラスを誤って10個も割ってしまったというのに。
忌々しい過去は頭を振って忘却させて、別のことを考える。
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