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もしくは歪みないっていうのかもしれない。
(けど、そういうところがみつな先輩の良いところでもあるか。なんていうか、反応に飽きないっていうか、楽しいっていうか)
だからといって俺がMってわけじゃないけどね。
みつな先輩はキツネのキャラクターのぬいぐるみを手に取りながら、俺が求めた過去の話を始めた。
「今日の朝の、岸野さんが図書委員をやっていた、という話を覚えてますか?」
「はい、覚えてます」
「私、一時期図書室に通いつめてたことがありましてね、そこで岸野さんと出会ったんです」
みつな先輩は過去を思い返すと、笑みを浮かべ始めた。
「初めは岸野さん、私が話しかけても反応が薄かったんですけど、オススメの本とか尋ねて、その感想を交わしあううちに仲良くなったんです」
「なるほど、そこから岸野とみつな先輩は仲良くなっていったんですね?」
「そうですね。気がつけば、本だけに関わらず、好きなもののお話とか、今日はなにがあったのだとか、話すようになりました」
「なるほど、友達だったから、岸野のことも知っていたと」
「ふふ、両親が引っ越すって聞いてはいたのですが、まさか由紀くんのお家に行くとは思いもしませんでしたけどね」
みつな先輩は肩をすくめて苦笑いを浮かべる。
岸野はみつな先輩の友達で、その岸野がバイトの後輩である俺の家にやってきたってことか。
これはまた、みつな先輩から見たら奇妙な運命を感じるな。
「岸野さんは不器用ですからね。やっぱりまだ、由紀くんには心を開けてないみたいでしたけれども、それも時間の問題でしょう」
「え?」
「ほんの些細なきっかけで、岸野さんとあなたはきっと仲良くなれますよ」
自信に満ちた表情で、みつな先輩はお姉さん顔で柔らかに微笑んだ。
どうして言い切れるのだろう。
だって俺、岸野の家族が残したっていう大切な写真立てとか、壊してしまったというのに。
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