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「岸野さんは気持ちさえしっかりしていればどんなものだって喜んで受け取ってくれますよ。だから、由紀くんのセンスで選んであげてください」
「けど、ならどうして先輩はここに」
「ふふ、由紀くんが岸野さんにどういったプレゼントを選ぶのかなと、友達として気になっただけです。岸野さんへのお詫びに下着をプレゼントでもされたら困りますからね」
「どこの世界に仲を築くために下着をプレゼントする人がいるんですか!?」
「冗談です。まあ、本音を言うんだったら、プレゼントは私の意見を聞いて選んでもらうよりも、由紀くん自身で決めてもらいたかっただけです。やっぱり、参考を取るのも大切でしょうけど、由紀くんが岸野さんのために一生懸命考えて、選び抜いたものこそ、気持ちが込められたプレゼントとなるんじゃないかと思いますので」
「あ……」
そっか、確かにみつな先輩の言葉を鵜呑みにして選んでしまったら、それは俺からのプレゼントって言い難くなる。
“岸野は素直な気持ちに応えてくれる女の子”
俺は多くの人からアドバイスしてもらったではないか。
それに……
(みつな先輩は、岸野の好きそうなものが置かれている店にまで案内してくれたではないか。しかもこういう女性向けの雑貨を取り扱う店は男一人では入りづらい場所。そういった男が足を運べる限界も配慮してくれたんじゃ)
みつな先輩は「こういった女性ものを由紀くんに身につけさせて、羞恥プレイさせるのもアリですね~」なんて相変わらず突拍子もないことを口にしているが、ちゃんと俺と岸野のこと、考えてくれていたのだ。
(まったく、この人には敵わないな)
伸ばされた黒髪を揺らし、無垢な容姿とはかけ離れたことを口にする先輩を見ながら俺は肩をすくめた。
「……みつな先輩」
「ん? なんですか?」
「いつも、ありがとうございます」
こうまで後輩のことを考えてくれる先輩なんてそうそういない。
俺は心から感謝を込めて言葉にしてから、岸野へのプレゼント選びを再開するのであった。
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