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――ピンポーン
インターホンの音が家に鳴り響く。
ただいま午後の1時。日和さんが言った一時間後の時間だ。
「ついに来たのか」
一階にある自室にいるはずの日和さんがインターホンに応対しにいかないということは、あの人、俺にまかせる気満々だ。
正直緊張する。そりゃもうドキドキして仕方がない。
どんな女の子なのか、顔も経歴も知らない女の子と一緒に暮らすことになるのだ、当然の気持ちである。
俺は意を決してリビングを出ると玄関へ向かう。
深呼吸を一回行ってから、玄関のドアノブを俺はゆっくりと開ける。
するとそこには……茶色のストライプの制服のような服を着た、目ボケ目の男の人が……
え、このいかにもうさんくさいおっさんが……岸野雫!?
そ、そりゃあ、日和さんは『岸野雫』が男で、歳とかは言っていなかったけど、そんな……こんないやいや配達業でもやってますみたいな疲れ切ったおじさんと一緒に暮らすことになるだなんて……
「あ、どうも、ごめんください。茶トラ運輸の者ですが」
「……え? あ、はい」
ですよねー
配達業やってますみたいな、じゃなくてそのまんま配達業の人であった。
「ごめんなさいね、いやいや配達業やってるみたいな疲れ切ってるおじさんで」
「って、俺知らぬ間に心の声出ちゃってた!?」
「そりゃもう、もうこの世の終わりを見つめるような死んだ目で、面と向かって言っていましたがな」
「あはは、それはすみません」
こんなあともう少しで加齢臭を発しそうなおっさんと一緒に暮らすと思ったら、誰だって死んだ目になるわ。
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