クーデレ少女がやってきた

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 配達のおじさんから胸に抱えられるサイズの小包を受け取り、おじさんにサインを渡す。 「それでは確かにサインもらいました」 「お疲れ様です」  荷物を受け取ると、配達のおじさんは踵を返していく。  俺はそれを見送るのだが、すぐに息を飲みこむことになる。  今の今まで気がつかなかった。  配達のおじさんが去る背の影に、小さな女の子がジッと立っていたからだ。  物静かに佇むショートヘアーの少女。右頭にサイドテールを風に揺らして、大きな旅行用のカバンを両手に抱えながら、彼女はジッと家の外観を眺めていた。  茶色のピーコートを羽織った少女の瞳はゆっくりと下へと下りていって、やがて俺の目と視線がぶつかる。  息を吸うのも忘れそうなくらい、俺はその子の可愛さに魅了されてしまった。  ……って見とれている場合じゃないって!  お互いの間に数瞬訪れた沈黙を破るように、俺は開口した。 「えっと、君が、岸野雫?」  俺の問いに少女はゆっくりと首を縦に振った。 「……あなたは?」 「えっと、高原由紀。日和さん――俺の母さんの子どもだよ」 「日和さんの……?」 「そう、だけど」  まるで聞かされていなかったかのように、岸野雫は目を驚かせるように見開かせた。 「とりあえず、家に入ろうぜ。外、今日は少し寒いからな」 「うん」  相づちを打つ岸野雫。  彼女を玄関に通して、とりあえず俺はリビングに案内をした。  
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