別れ話をしよう

毛が逆立つとはこのことだろうか。鼓動が耳もとで鳴る。全身の血が逆流するような、それでいて足下がふわふわした浮遊感も覚える。

俺は夢でも見てるのか？

｢別れよ？｣

もう一度、彼女の放った一言がエコーがかかったかのように頭の中で反響した。

今現在、自分の脳内に入ってきている情報があまりにも大きく、そして唐突だっため思考が追いつかない。

若干濡れた髪、そして下着姿で大きなベッドの真ん中で手をついて横になっている彼女。
潤んだ唇で、感情のない目で笑いかけてくる。

その姿は今まで見てきたどんな姿よりも艶やかで、狂おしく、一度捕らえられた俺の視線を離すことを許さなかった。

俺は浮気というものをされた。