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―――私は玄関前にいる。
「…久々だな」
外に出ることができなかった私にとってこの場所は滅多に来ることがなかった。
以前ここに来たのはあの時…お姉様がいなかった時。
…世間でいう紅霧異変という異変をお姉様が起こした数日後の夜。
その時に私は初めて外に出た。
…パチュリーに気づかれちゃって屋敷の外には出れなかったけど。
でも、あの時外に出た事で私は色々な「初めて」に出会うことが出来たのだ。
「…日傘借りるから」
当たり前だが私の日傘は無い。
なので置いてあるお姉様の日傘を手に取った。
「……行ってくるから」
私はそう言い残して外に出た。
―――外は太陽が照らし、花々は風に揺れながら私を見送ってくれているようだった。
「…なんであの時気付けなかったんだろうね」
私はそう言って花畑の方へ歩いて行った。
「あの時はまだ咲いてなかったのかな…」
―――花々は穏やかな風に揺られるだけで、何も教えてくれない。
「…ずっとここにいる訳にはいけないんだ…。行ってくるね」
そう言って花々の間を歩いて行った。
「……お気をつけくださいませ、妹様………」
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