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少女「そうなんだ……それじゃあ他にどんな欲求が残ったの?」
宇宙人「色々ありますが、大部分は……生存欲と知識欲ですね」
少女「へぇ~不思議。『食べたい』って欲求は消えたのに、『生きたい』なんて基本的な欲求は残ったんだ」
宇宙人「それが生命体としての限界というやつです」
宇宙人「生命体である以上、自己の生命の存続を求めずにはいられない」
宇宙人「生命現象の知的解析に成功してなお、我々は『自らが生命体である』というその事実を乗り越えることはできなかったのです」
少女「ふぅん。でも何だかつまらないわ。あなた女の子よね?」
少女「それなのに、これまでもこれからも……好きな男の子はいないってこと?」
宇宙人「ええ。しかし別段そのことを不満にも思いません」
宇宙人「自分の子孫を残すのも、情報体コミュニティを存続させるための義務程度に考えています。他の仲間の多くもきっとそうでしょう」
宇宙人「ですから、あなたの恋愛相談には乗ってあげられません。すみませんが」
少女「別にあなたにそんなこと期待してないわ」
宇宙人「十分なエネルギーさえあれば、仲間と共有しているデータベースを参照することで適切なアドバイスを引き出すこともできるのですが、残念です」
少女「いいって言ってるでしょ別に」
少女「どっちにしろ……男の子は少し怖いもの。お付き合いはお断りするわ」
宇宙人「そうですか。残念です」
少女「なんであなたが残念がるのよ……って、いいわ答えなくて」
宇宙人「いえ、別に交配のことだけではありません」
宇宙人「恋愛を楽しんでくだされば『喜び』や『楽しみ』などの様々な感情採取が効率的に行えそうなので、残念だと思ったのです」
少女「それは申し訳ないわね。でも、一朝一夕に性格なんて変えられないもの」
宇宙人「ええ、まぁ先を急ぐ旅でもありませんので、気長に待たせて頂きます」
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